体外受精、何回やるかで費用は何倍にもなる
「体外受精17回目でやっと陽性。自費で採卵・移植繰り返して金銭的にも精神的にも限界」
「何回やるかで費用は何倍にもなるのに、累計の見通しが全然立たない」
「未来の負担が見えないのが怖い。3周期分の貯金で足りるのかもわからない」
SNS上の匿名の声を要約・意訳しています
体外受精・顕微授精は、1回で妊娠に至らないことも少なくありません。 複数の周期を重ねると費用は積み上がっていきますが、「何周期でいくらになるか」を事前に把握している方は多くありません。 累計費用の見通しを持つことは、治療を続けるうえでの判断材料になります。
1周期あたりの費用構造
体外受精1周期の費用は、大きく3つの要素から成り立ちます。
上記は保険適用の体外受精(40歳未満、区分ウ)の概算です。高額療養費を適用する前の金額です。
多数回該当で4回目から上限が下がる
周期を重ねるうえで知っておくべき重要な制度が「多数回該当」です。 直近12ヶ月で高額療養費の対象になった月が3回以上ある場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに引き下げられます。
たとえば所得区分ウ(年収約370〜770万円)の場合、通常の限度額は月約80,100円ですが、多数回該当では月44,400円になります。 毎月治療がある方にとっては、4ヶ月目以降に月35,700円の差が出る計算です。
多数回該当について詳しくは、高額療養費制度の記事で解説しています。
3周期・6周期の累計シミュレーション
高額療養費と多数回該当を適用した場合の保険分自己負担の累計目安です。 区分ウ(年収約370〜770万円)、先進医療なし、助成金なしの条件で計算しています。
| 周期 | 保険分上限/月 | 保険分累計 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1周期目 | 80,100円 | 80,100円 | 通常上限 |
| 2周期目 | 80,100円 | 160,200円 | 通常上限 |
| 3周期目 | 80,100円 | 240,300円 | 通常上限 |
| 4周期目 | 44,400円 | 284,700円 | 多数回該当 |
| 5周期目 | 44,400円 | 329,100円 | 多数回該当 |
| 6周期目 | 44,400円 | 373,500円 | 多数回該当 |
保険適用分だけ見れば、6周期で約37万円です。 ただし、先進医療や自費薬を加えると、6周期の総額は100〜300万円のレンジになることもあります。 先進医療費の助成金(東京都なら最大90万円)が使える場合は大きく負担が変わります。
治療ステージとお住まいを選ぶだけ。登録不要です。
保険の回数制限にも注意
保険適用の体外受精・顕微授精には回数制限があります。 40歳未満で開始した場合は通算6回まで、40歳以上43歳未満で開始した場合は通算3回までです。 この回数は「胚移植」の回数でカウントされます(採卵だけの場合はカウントされません)。
回数を超えた場合は全額自費となり、1周期の費用が大きく跳ね上がります。 残りの回数を意識しながら治療計画を立てることが重要です。
医療費控除で年間の累計を還付
複数周期の治療で年間の医療費が高額になった場合、確定申告の「医療費控除」が使えます。 年間の医療費が10万円を超えた分について、所得税と住民税から還付を受けられます。
保険適用分だけでなく、先進医療費・自費薬・通院の交通費も医療費控除の対象です。 領収書は周期ごとにまとめて保管しておくことをおすすめします。
累計費用を「見える化」する
「何周期まで続けるか」は非常に個人的な判断です。 しかし、費用の見通しがないまま治療を続けると、金銭面の不安が精神的な負担に直結します。 シミュレーターで周期数を変えて累計費用を確認すると、治療計画を考える材料になります。
複数周期を続ける場合、月ごとの支払い管理が重要になります。高額療養費「あといくら」を追跡する記事も合わせてご覧ください。 不妊治療の費用全体については、費用の全体像をまとめた記事を参考にしてください。 制度を使っても足りない場合は資金調達の選択肢の記事もご覧ください。
出典・参考情報
- 厚生労働省「不妊治療に関する取組」(2024年12月時点の情報)
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2025年3月時点の情報)
- 国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(2025年1月時点の情報)
- 保険点数は令和6年度診療報酬改定に基づく概算値です(2024年6月施行)
免責事項
本記事の金額はすべて概算です。実際の費用は医療機関や治療内容により異なります。 治療回数や治療方針に関する判断は主治医にご相談ください。
管理人
にんかつのミカタ 編集部
不妊治療中の当事者として、自身の経験をもとに費用・制度情報を発信しています。すべての記事は公的データに基づいています。